HondaのNSR250Rが発売された年

ホンダがNSR250Rを発売したのは1986年、当時圧倒的な強さで世界のバイクレースシーンを席巻していたホンダを代表するモデルであったNSR250Rをそのまま市販車として発売したものである。
それこそレーサー用のバイクに保安部品を付け足しただけとも言えるモデルで、ライダーが「レーサーになったような気分に浸る」モデルとして売り出したのが大きな特徴だ。

80年代、ホンダはレース部門では圧倒的な強さを見せていた一方、バイク販売においてはライバルのヤマハを相手に少々苦戦していた部分もあった。
そのテコ入れとして、レース用バイクのレプリカを市販車として投入する手に売って出た。
その象徴となったのが、このNSR250Rなのだ。

名車と呼ばれる理由

このNSR250Rが名車と呼ばれる理由は、おもに2つある。
まず、「限りなくレーサー用に近い市販車であること」だ。
ホンダはこの点に徹底的にこだわっており、レーサー用のモデルと共通して使用するパーツが非常に多く、先述したように「保安部品を加えただけ」に近い作りになっている。
つまりプロの、それも世界のトップクラスが使用しているモデルに非常に近い仕様、性能を備えていることになる。
多くのバイク好きが魅了されたのも当然と言えば当然だろう。

しかも当時ホンダはレーサー用のバイクとの同時開発を重視しており、「今現在バイクレースで使用されているバイクを乗ることができる」という気分をライダーに提供できたのもヒットした大きな要因として挙げられるだろう。
「レースの舞台で活躍した往年の名機」ではなく、「今現在最前線で大活躍している名機」に乗ることができる。
これだけでも、名車として評価されるのは約束されたようなものだったのだ。

そしてもうひとつの理由は、基本中の基本である「バイクとしての基本的な性能が優れていた」点である。
レーサーによって乗りやすいバイクが、一般のライダーにとって乗りやすいとは限らない。
ホンダはその点にもこだわり、軽量・コンパクト化とともに摩擦抵抗の軽減、さらに力強い出力、高い剛性なども実現している。
まさに「技術のホンダ」に相応しい優れた仕上がりになっていたのだ。

80年代にはレースタイプのレプリカモデルが人気を博したが、このNSR250Rはその先駆けとなった名車とも言えるだろう。
その後88年にはフルモデルチェンジし性能面が大幅にパワーアップ、90年代にも人気を維持するなどまさに一時代を築いた名車となった。
レーサー用との同時開発にこだわったことでモデルチェンジも短いスパンで行われ、話題性に飛んでいたこと、デザインも「いかにもレーサー用」な斬新なものであったこともNSR250Rが幅広い層から高い評価を受けた理由として挙げられるだろう。